俺は戦犯を調べる専門の探偵だった。
戦争は終わったばかりだから、いくらでも仕事はあった。
物資の横流しから住民の殺戮まで、戦犯はいくらでも見付かったからだ。
「次の仕事はこれだ」と俺は指示を受けた。「オリゴ島の住民虐待疑惑の調査を頼みたい」
「オリゴ島って遠いぞ。往復の飛行機代は出してくれるのか?」
「無理」
仕方がないので俺は資料をめくって調査した。
その結果、とんでもないことが分かった。
オリゴ島は防諜上の欺瞞情報のために産み出された空想上の島で実在していなかったのだ。
「分かったぞ。この島は実在しない。住民も存在しない」
「じゃあ、あの島に駐在していた兵士達はどこに駐在していたんだ?」
俺は背筋が寒くなった。
(遠野秋彦・作 ©2023 TOHNO, Akihiko)